皇室典範 田嶋女史vs櫻井女史
5時過ぎ、自宅に戻る。4時間ほど仮眠したのち、シャワーを浴びる。
10時から某所で打ち合わせ。昼食を出前でとりつつも15時までの打ち合わせとなった。昼食は、盛りそばの大盛り。
17時近くに一般質問の原稿を提出する。18人目で最後とのこと。
21時過ぎ、秋刀魚の塩焼きを中心に夕食をとっていたところ、電話があり、長野市での懇親会に出席する予定であったことを言われ、青ざめる。
広島から帰ってきて寝込んでいたときにもらった電話がそれだったと朧気ながら思い出す。愛車のプリちゃん(メス、2歳半過ぎ)で高速道路を飛ばし、一路、長野市へ。2次会途中からの「飲み飲み」となった。車中泊。
平成18年2月25日『新潟日報』に「争点論 誕生するか女系天皇」と題して、田嶋陽子女史と櫻井よしこ女史の比較投稿が掲載されていた。田嶋陽子女史は、高校時代の母校の英語の先生であったこともあり、卒業時には親近感をもっていたが、社民党に近づくにつき、段々と違和感を覚え、最近ではすっかり「嫌い」の部類に入っている。
櫻井よしこ女史は各種イベントでお会いすることも多いうえ、長岡高校出身ということもあり、都内でお会いしても共通の話題がある。
・・・とそんな個人的なことを別にしても、お二人の皇室典範に関するものは対象的であり、興味深いものであった。以下に引用したい。
小泉純一郎首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が、女性・女系天皇誕生に道を開く報告書を提出。男系維持派の巻き返しに、ポスト小泉の政局的思惑も絡み天皇制をめぐる議論は活発化した。紀子さまご懐妊の報道でやや鎮静したものの、両派の溝は深い。桜井よしこ氏、田嶋陽子氏の女性論客二人に話を聞いた。(共同通信編集委員・龍野建一)
田嶋陽子(評論家)
たじま・ようこ
1941年、静岡県出身。津田塾大博士課程修了後、英国
留学。法政大教授などを経て参院議員。知事選出馬で失職。
テレビのコメンテーターなど
男女平等の手本期待
親しみ感じる存在のままで
-女系・女性天皇問題を考える基本的立場は。
「わたしは天皇制反対で、いずれなくなる方がいいと思って
いる。長子継承とか女性天皇とかを言う前に、天皇制が
日本にとって本当に必要かをまず最初に議論しなければ
いけない。憲法で天皇制は国民の総意に基づくとされている。
もし国民が天皇制はいらないということになれば、大
変お疲れさまでした、ご自由にお暮らしくださいとなる。
そうなれば、男系、女系などは一家の問題だから家族会議
でお決めいただければいいことで、国民の関知するところ
ではない」
-しかし共和制にしようというのは少数派だ。
「国民の総意で天皇制を続けようということならば、皇室典範
を改正し、女系・女性天皇も容認しなければ続かない。男系
ではつぶれてしまう。わたしは男系、女系どちらでもいいの
だが、国が法律まで定めて男女共同参画社会を目指し、男女
平等に一歩ずつ歩み出しているのだから、一度、女性・女系
天皇を見てみたい気がする。基本的人権、男女平等の憲法が、
判断の規範だ」
「皇室典範は憲法の下位法で、普通の法律と同じように
決められるということを、国民は理解しなくてはならない。
その憲法は主権在民をうたっている。それは、天皇の在り方
は国民が決めるということでもある」
-「血筋」による「万世一系」維持が男系天皇派の主張だが。
「制度として象徴天皇は決められた国事行為を行うだけなの
だが、天皇ご一家は、人権を持ち民主的な、国民にとっての
理想の家族であってもほしい。すでに家長制度はなくなって
いるのだし、女性は子どもを産むだけの道具にされては
いけない。女系天皇でもよいということになれば、今も家の
跡取りのプレッシャーやトラブルに苦しむ国民は随分、
楽になる。そのお手本になってもらいたい」
「人間中心の考え方からみると血筋というのはまったく、古い
考え方だし、差別、女性蔑視(べっし)につながる。天皇制
の成り立ち自体が女性差別を内在しているともいえる。最近、
これまで遠慮されていた皇紀2666年とか125代などと
いう表現が大手を振って出てきているが、歴史は逆戻り
できない。前近代のしっぼを皆さんは、どう考えていくのか
という問題だ」
-男系維持のために旧皇族の復帰や廃絶宮家の復活などの
アイデアもあるが。
「本当にそうしたいならしてみたらよいが、そんなことをしたら、
遺伝子学的にも問題が起こりはしないか。愛子さんと旧皇族の
子孫の男子を結婚させる話まで出ているようだが、結婚の自由
を抑圧、無視することになる。ロボットや機械ではあるまいし、
そういう非人間的なことは許されないし、悲劇だ。ひどい発想
想であり、皇室は駄目になる」
「今、日本には皇室を尊敬するというより、親しみを感じている
という人のほうが多い。愛子さんを生まれた時から見守っている
からこそ、みんな、愛子さんが天皇になってもらいたいと思って
いる。親しみがうせたら天皇制はおしまいだ」
-女系天皇問題を論議する意味は。
「民主主義国家に本当に天皇制がいるのか、ということを考える
きっかけになればよい。たとえ天皇に政治権力はないとしても、
これからの国の在り方にかかわる。国民に最後の責任がある」
桜井 よしこ(ジャーナリスト)
さ<らい・よしこ
ベトナム生まれ。米ハワイ大卒。米紙東京支局員、ニュース
キャスターなどを経てフリーランスのジャーナリスト。著書
に「エイズ犯罪・血友病患者の悲劇」など。
血筋守ることが肝要
天皇家という文明学ぶ好機
-女系天皇反対の立場を明確にしているが。
「女系天皇には反対ですが、女性天皇は容認です。愛子さまは
父の血筋を通して天皇家につながっている男系の女性天皇
だからです。しかし、成人して庶民と結婚し、さらにその女子
が天皇になって、また庶民と結婚するとなると、限りなく
天皇家の血が薄まっていく。それがなぜいけないのか。科学
ではなく、文明論だからです。神武天皇は神話の中の人物だが、
この方を初代として男系で125代、血筋を天皇家として
守ってきた。そういう民族生成の物語には物語ゆえに、理屈
を超えた面がある。今日の合理主義で割り切るという発想が
おかしい」
「飛鳥時代にも、男子の世継ぎがいないときには女性天皇で
時間を確保し、男系の血筋の男子を捜した。継体天皇は
今では親せきとは言い難いはど離れた傍系だが、当時の
内親王をお嫁にするという工夫をした。旧皇族の中にも、
大正天皇の姉妹をもらい、今の天皇家と極めて近い関係に
ある家がある。そういう先人の知恵、工夫を大事に
しなければいけない」
-困難な男系維持の主張は、過激な反皇室論者に
通じるという皮肉もある。
「それは理屈でしょう。逆に、庶民の夫を”陛下”と呼ぶこと
を国民がどう感じるか。旧皇族は連合国軍総司令部(GHQ)
の命令で皇籍を離脱させられ、60年間、一般人として暮ら
してきたが、心持ちはしっかりとしている。今から準皇族と
位置付け、お役目を果たしていただけば、20年、30年先
にそこで生まれた男の子のほうが、よほどしっくりいくの
ではないか」
「愛子さまの配偶者に皇族からという想定は、市民的スタイル
の逸脱という疑問があるかもしれない。しかし、現憲法で
世襲を定めている天皇家は職業選択、居住、婚姻の自由など
憲法上の自由とは、もともと別世界にある。表現は慎重で
ありたいが、国民一般の婚姻の自由とは同列に論じられない
のではないか」
-皇室典範の改正は。
「改正せざるをえない。例えば、男系男子という現行の条文を
男系の御子とすれば、女性天皇の道は確保される。それでも
(継承者は)限られるから、養子や断絶宮家の再興、旧皇族の
復帰が必要になる。野中の一本杉のように孤立している今の
皇室のすそ野を広げ、周りに風を防ぐ森がなくてはいけない」
「天皇は国家、国民のために祈りをする存在であり、権力では
ない。大事なことは文明の担い手として、先人が体験から
編み出した権力と権威の分離を担保することだ」
-紀子さまのご懐妊で論議が少し静まった。
「ニュースを聞いた時、日本文明の逆襲だと感じた。少し冷静
になって考える時間を何年間か、与えてくれたのではないか。
小泉(純一郎)首相もどうしても典範改正案を通すと
言わなくなったし、第4子や皇太子家でのご懐妊もありえない
ことではない。展開は変わってくるだろう」
「若い世代には天皇家に関心のない人が少なくない。あっても
芸能人の扱いだ。女性天皇と女系天皇の違いを分かっていない人
も多い。その中で議論すること自体が難しいし、今、どちらの
結論が出ても不満が残る。与えられた時間を上手に活用して、
天皇家の由来、それを大きな核として形成されてきた日本文明
を学ぶ好機だ。日本人が日本についての無知から抜け出す機会
ととらえるべきです」
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