2時、就寝。6時、起床。シャワーを浴び、ホテル1階のビュッフェで朝食をとる。
京都のホテルらしく、漬け物が4種類と充実しており、山芋のとろろまであった。納豆はミツカンの「金のつぶ」のカップで、とろろ納豆にして楽しむ。
集合時間まで2時間ほどあったので、「浄土宗総本山 知恩院」近くまで移動し、祖父がよく風呂の中で歌っていた軍歌『戦友』(作詞:真下飛泉 作曲:三善和気)の歌碑を探す。
歌碑は、知恩院の塔頭である良正院の門前にあった。日露戦争時代の名曲と言われた軍歌『戦友』は、「ここは御国を何百里 離れて遠き満州の赤い夕陽に照らされて・・・」ではじまる曲で、大東亜戦争中は歌詞の悲壮さもあり、陸軍では歌唱禁止と言われた曲である。
歌碑は、作詞者の真下飛泉氏が亡くなった場所に近い良正院に、教え子であった1824人が顕彰して昭和2年に建立された。文字は、『肉弾』の著者桜井忠温氏。終戦後、歌詞が軍国調であるとして、GHQにより破壊を命じられたが、良正院の当時の住職・細井照道導師の弁護で破壊を免れた。
11時前、JR湖西線唐崎駅に到着。今日から1泊2日で、市(区)議会議員対象の「平成18年度第3回市議会議員特別セミナー」を全国市町村国際文化研修所(滋賀県大津市唐崎2丁目13番1号)で受講する。
12時、株式会社大津給食センター(電話:077-537-2806~8)の弁当で昼食。
13時過ぎから研修が始まった。この研修には全国から223名の地方議員が出席した。
今日の1コマ(90分)目は、 「地方公務員改革は自らの手で~地方公務員を取りまく現状と課題~」と題して、東京大学社会科学研究所教授 中村圭介氏による講演。
1976年東京大学経済学部卒業。1985年東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得退学、雇用促進事業団雇用職業総合研究所研究員、武蔵大学経済学部助教授、東京大学社会科学研究所助教授を経て、1998年から現職。経済学博士。『日本の職場と生産システム(東京大学出版会1996年)』、『行政サービスの決定と自治体労使関係(明石書店・共著2004年)』、『変わるのはいま一地方公務員改革は自らの手で(ぎょうせい2004年)』、『成果主義の真実(東洋経済新報社2006年)』など著書多数。
1.はじめに
90年代末からの地方公務員制度改革の議論をみて、地方公務員の実態を知らない人が議論するような状態でもあり、「危うい」と思ったため、地方公務員の研究をするようになった。
実態調査をして、現在まで至る。
人口1000人あたりの公務員は
フランスは97人
アメリカは75人
ドイツは65人
イギリスは81人
北欧諸国はもっと多い。日本はどのくらいかといえば、38人。
先進諸国のなかの半分しかいない。
余っているから減らすという論理ではない。ただし、制度改革をして、人事管理の改善をすることは重要。 現在の地方公務員の人事管理は問題が多すぎる。
*欧米の公務員は賃金を下げることもできることは大きく違う。
2.人事管理の重要性
<事業目標は?マーケット・メカニズムが働かない
自らを律するメカニズム>
いつも地方にいくと、地方公務員に「事業目的」を聞く。
民間企業は「金儲けであり、社会貢献」。地方公務員は何を事業目標としているか分かっていない場合が多い。
70人以上にインタビューしたなかで、事業内容を答える地方公務員がほとんどのなか、一人だけ釜石市の若い女性職員は、「釜石の市民を元気にするためです」と答えただけだった。
民間企業は目標を達成できないと倒産する。つまりマーケットメカニズムが働く。しかし、自治体は目的を意識せずとも生き延びることができ、外部から判定するマーケット・メカニズムが働かない。
自らを律するメカニズムが必要である。 それが人事管理であり、地方公務員改革の要諦となる。
良き人事管理システムをもっている国内の自治体は少ない。
3.異動の範囲
<ジェネラリストかスペシャリストか>
日本のサラリーマンの多くはスペシャリストじゃなく、ジェネラリストが多いと言われるが、詳細に調べてみると、ほとんどがスペシャリストであり、畑をもっている。
*特定の分野で昇進する「一貫型」が多い。
事例:日本鋼管、三菱商事等
自治体では、ジェネラリストとして3年から5年を期間として異動させる。つまり仕事の深さではなく、異動させている。
その理由としては、
・広域性のある自治体で地域間異動をさせたい
・市の職員たるもの、すべて答えられなければならないという思想(職員全員をスーパーマンにさせたい幻想)
・同じ仕事させると飽きて士気が低下する
の概ね3つ。しかし、オールマイティの市の職員を誰が求めているのか。本当に市民のためになる職員はスペシャリストではないのか。
多くの場合、その課の1/3を入れ替えているが、年齢など関係なく、1/3は素人ということになり、実質33%のパワー減となり、力を捨てている。ジェネラリスト思想の弊害。
4.役職昇進
<選抜のメカニズム>
管理職の選び方も人事管理システムでは重要となる。
多くは、一時的な情報により昇進を決める。複数の部長が同じ評価をした場合のみ昇進するような世間相場的な制度をとっている例は少ない。
筆記試験で図る能力は筆記試験ができる範囲の人間しか選ばない。
リーダーシップが筆記試験で分かるのか。
人事評価、管理システムを望む声はあるものの、実際の導入までいっていないのが現状。
窓口業務で、Aさんのところに市民がいくと必ず市民が怒って帰る、Bさんのところにいくと必ず市民が納得する、という簡単な事例でも分かるように、行政の仕事には能力差が大きくでる。
管理職も、怒った市民が来たときに部下より先にでていくのが良い管理職。
5.昇給と昇級
<インセンティブかモラル・ハザードか>
昇給は法律や条令に反することなく、庁舎に来ていれば、給料は上がり続ける。自らの仕事に対して、アンテナを高くしている職員も、市民を怒らせる職員も同じように昇給する。
「怠けるなよ」というメッセージは自治体のなかには発生しない。同時に「人より頑張ったら褒美があるよ」というメッセージもない。ボーナスに反映させるようなシステムを急いで構築すべき。
*「残業が人につく」事例も多い。
その人が異動した課は必ず残業が増える。つまり日中仕事をしない。
注意をしない場合が多いのは、課内は仲良くという自治体が多いため。
休憩ののち、「さらなる地方分権の推進のために」と題して、現職の知事である増田寛也岩手県知事の講演。
現職の知事でありながらも、3期目を終わろうとするところであり、ご本人いわく「3期12年もやれば十分。しがらみも出てきてしまう」と4月の改選には出馬しない宣言をしている。
1951年東京生まれ。1977年東京大学法学部卒業。同年建設省入省。千葉県警察本部交通部交通指導課長、茨城県企画部鉄道交通課長、建設省河川局河川総務課企画官、同省建設経済局建設業課紛争調整官等を歴任し、1995年岩手県知事初当選。1999年再選。2003年全国初のマニフェストを掲げて、三選を果たす。全国知事会・地方分権推進特別委員会委員長のほか、新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)副代表及び知事・市町村長連合会議座長として、地方分権、三位一体改革等に対する地方からの提言活動において中心的役割を担う。また、郵政民営化委員会委員、官民競争入札等監理委員会委員として、地方の意見の政策への反映に努めている。
さらなる地方分権の推進のために
安倍内閣でこれから第2次分権改革に入る。
平成7年に知事になって以来、3期目。ここで区切りにする。
1.未完の分権改革
総論
平成5年6月に地方分権推進決議が衆参両院で行われた。平成7年、地方分権推進法の成立。5年間の時限法。平成12年4月、地方分権一括法。国と地方が対等平等の位置になる。しかし、権限は地方にある程度移譲されたが、財源が伴っていない。財源の移譲がなければ、分権改革は終わらない。今でも自主財源は30%未満という自治体がほとんどである。
<三位一体改革の評価>
財政面の分権だったはずであったが、中身が伴っていなかった。4兆円削減し、3兆円の財源移譲が表面上の目標であった。 交付金の補助率が変わっただけであった。
純粋に地方の一般財源化したのは保育園程度であった。
改革については、国民がどれだけその内容を理解しているかにあると思う。国は20兆円のうち、4兆円を地方移譲する予定が実際には3兆円、この部分が国民に周知されていない。効果を説明しなかったのも反省すべき点である。
結局は国と県との金の取り合いという面が多かった。
4兆円の補助金廃止リストを作ったのは大きな成果であったかと思う。
納税者の税が国に入らず、都道府県に入ることで、納税者(=有権者)の目が厳しくなる。
地方への税源移譲だけであったら、結果は良いであろうということであったが、富裕自治体と過疎自治体との差を広げるという矛盾を抱えている。
「貧乏な自治体ほど、より貧乏になっていく時代」
<地方6団体の取り組み>
知事会と市町村会はこれまで統一行動がなかなかとれなかったが、補助金の改革については6団体という認識ができた。
国に頭を下げて、金をもらってくるという地方自治体の構図が変わりつつある。
2.次なる改革へ
<中央集権型から地方分権型のシステムへ>
人口減少が問題になってきている。
限界集落をはじめ、国土保全が重要になってくる。
介護の例も、「ご近所介護」「ボランティアでの入浴車」など地域力が試される。
ITをはじめとする技術革新も地方分権が似合い、コンパクトシティも同様。
がけ地の下の民家なども税金で移動してもらっている。これも権限が移譲されているからできることであり、岩手県内は900箇所ほどある。
個人資産の移動に税金を投入することの賛否はあるが、災害が起こった場合を考えれば結果的に安上がりになる。
3.残された課題
第1次分権改革で残された課題
さらなる税源の確保。富裕自治体と過疎自治体とのバランス。
対東京の戦略(今年は愛知も不交付団体の予定)
土地に関する法をはじめ、都道府県から市町村に落とし込むこと。
法律による規律密度を緩和する。
市町村の議会の責任のもと、条例を制定し、自治体運営を行う。
国からの権限委譲をさらに進めること。国の出先機関の仕事は都道府県でできる仕事。国の出先機関は国会の目が届きにくい。都道府県に落とし込み、都道府県議会で追求ができるようにし、この2重行政をやめる。
消費税の1%は均等に自治体に配分されいる。偏在の大きい税は小さくし、地方消費税を上げてもらうことが地方自治体運営に必要になっていく。
地方分権改革を進めるための条件
・富裕自治体と過疎自治体とのバランス。
対東京の戦略(今年は愛知も不交付団体の予定)
・道州制への対策。よく整理する必要があり、国の権限が結果的に強くなる場合も予想される
4.地方側に求められるもの
困難を乗り越える覚悟。知事の不祥事が続き、信頼が失われている。
真に試されるのは各自治体の知恵であり、人材。
どこの自治体もスペシャリストの人材をほしがっている。
県から市町村に、税源、権限、そして人材も移譲する試みを岩手県では行っている。
最初は異質な人間が来ることに警戒感があったようであるが、現在は好評で希望も多くなってきた。
5.おわりに
真の分権国家へ
後藤新平の「自治三訣」をよく考えてほしい。
人のおせわにならぬやう
人の御世話をするやう
そしてむくいをもとめぬやう
*知事曰く、原敬、斉藤実などの歴代の岩手の偉人が生誕周年となる今年は歴史を見直す活動をしたいとのこと。
17時前に講演、質疑応答は終わり、続いて食堂での交流会となった。
全国若手市議会議員の会の仲間では、東京都武蔵村山市の天目石要一郎議員、滋賀県野洲市の内田聡史議員が参加しており、滋賀県の知事選でモメにモメた新幹線停車駅建設問題、そしてその後の地元市長選挙における推進派の市長当選と、あまりにも生々しい地元の声を聞いた。
その後の色々な自治体の議員と議員立法の手法や事例など情報交換をさせてもらい、河岸を変えながら、23時近くまで話合う。
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