昨日、講師でお話を頂いた前厚生労働省老健局長官の宮島俊彦氏の著書『地域包括ケアの展望』を読み、3時過ぎに就寝。
6時に起床し、持参してきたノートパソコン(ThinkPad X61,SSD,SXGA+化,LEDバックライト化)でメールやブログを書く。
9時、ホテル周辺を散歩したのち、コンビニで購入してきた納豆巻き、おにぎり(鮭)、ブルーベリーヨーグルト、低脂肪乳で朝食。
9時40分、ホテルをチェックアウトし、研修会場である神田駅に移動する。
10時30分から地方から考える「社会フォーラム」設立セミナーの3日目が始まり、堤修三氏(前大阪大学教授)が講師なった講演「国民皆保険制度と国民健康保険・高齢者医療制度」。
【講師プロフィール】堤修三氏(前大阪大学教授)
1971年東京大学法学部卒、同年厚生省入省。保険局保険課長、薬務局経済課長、老人保健福祉局企画課長、大臣官房会計課長、大臣官房審議官(介護保険制度実施推進本部事務局長)などを務め、2001年に厚生労働省老健局長、2002年に社会保険庁長官。2003年に退官し、2013年まで大阪大学教授。著書に『社会保障改革の立法政策的批判』(社会保険研究所)など。
主な内容は以下の通り。
>>医療と介護の一体化を考える切り口
(1)制度のレベル
(2)サービス提供のレベル
(3)利用者のレベル
1.国民皆保険の構成と機能
・全国民を律儀にカバーする国民皆保険
国民すべてをいずれかの医療保険に強制加入させ、必要な医療を保障する。
→ 国内にある医療機関・医療技術・医薬品は必要な範囲ですべて医療保険の対象
・国民皆保険の構成と機能
二元的制度・保険者分立による皆保険体系ではあるが
→ 給付は全国統一的に行われる。
これを前提に統一的な診療報酬の伸び率を調整することで、皆保険の支出面のコントロール。
→ 被保険者管理と保険料負担は制度・保険者別に行われている
なぜ被用者保険と国保に分かれているのか。一元化・一本化しないのか。
収入のあることが明確な被用保険者を対象する保険と所得等が明確である非被用者では保険の意味合いがまったく違う。
*保険料調達能力のある被用者を基本に国保に対する公費投入と被用者保険からの支援によって皆保険の費用が支えられている。
→ 自由開業制の結果として医療機関の地域偏在と「すべての国民に必要な医療を保障するという皆保険の理念」の矛盾
→ 自由なサービスによる費用を、公的な社会保険でファイナンスする困難
なぜこの奇跡的両立はできたのか。
統一的な診療報酬の伸び率調整。
高額医療の衝撃。どこまで皆保険で対応できるのか。
混合診療を全面解禁した場合、皆保険の理念は放棄するか。
*医療界が自主的に(費用と効果を踏まえ)高額な治療法や医薬品等の適切な使用ルールを作ることが望ましい。制度の側で支払いを査定するのは困難。
>>平成24年に1ヶ月で医療費が1億円を越えた月があったがマスコミ報道は少なかった。
2.国民健康保険制度の在り方
・社会保障改革国民会議における国保都道府県論
保険料徴収は手足のない都道府県にはできず、市町村に負わざるを得ない
→ 各市町村における医療費や保険料収納率が違うのに、一律の保険料は不公平ではないか。
→ 市町村ごとの保険料率とし、医療費や保険料収納率の差を反映させたらどうか。
分賦金方式による市町村別保険料率、市町村が独自に保険料率を設定して医療費実績に応じて精算すれば、市町村国保と何も変わらない。
*宮武委員(元毎日新聞)の提案:都道府県が一人当たりの平均医療費と市町村の平均収納率に基づき、基本保険料率を定め、それを指標に各市町村が保険料率を決定する。各市町村はそれに到達するよう競争する。
→ 都道府県国保の財政責任を都道府県と市町村で分担することが必要だが、その線引きは容易ではない。都道府県に責任を集中させれば、赤字垂れ流し、市町村を重くすれば市町村国保と同じになる。
・医療供給と医療保険を都道府県レベルで合わせるという発想
2005政府・与党の医療制改革大綱
→ 医療計画の作成など医療供給に関する行政権限が都道府県にあるので、それを医療保険の運営単位を合わせたらどうか。
後期高齢者医療の都道府県広域連合、協会健保の都道府県別料率のほか、国保の都道府県単位の方向。
都道府県には、病床規制以外、医療供給を直接コントロールする権限はなく、国保加入者であっても他の都道府県の医療機関を自由に受診できるので都道府県が医療供給や保険医療機関の行政を担うにしても、底が抜けている。
→ 都道府県が医療供給行政・保険医療行政(保険医療機関の指定)を担うことにより医療費を適正化し、都道府県単位の医療保険を安定的に運営するためには、被用保険を都道府県に分割し、さらにそれを都道府県国保に一本化(被用保険の廃止)するとともに、その加入者は当該都道府県の保険医療機関でしか受診できない(他都道府県での受診は償還払い)こととしなければ完結しない。
*医療計画の作成と医療保険の運営単位を都道府県レベルで合わせればうまく行くという程度の軽いノリ?の発想
→ 医療供給については、無理に医療保険と結びつけることなく、制度・政策に限らず、国民意識・医療関係者の姿勢・医学教育の在り方・医療メディアの役割も含めた総合的な取組みを地道に続けるほかないのでは・・・・
3.高齢者医療制度の在り方
・高齢者医療制度の維持可能性
→ リスクの塊である後期高齢者だけ集めては、保険は成り立つはずがない
現役世代の支援(公費・保険料)なしに成り立たないが、健保・国保からの後期高齢者支援金は負担させる根拠が薄弱。籍を抜いても扶養義務?
後期高齢者の数が増えてもそれを後期高齢者保険料の負担割合には1/2だけしか反映させない。介護保険のように人口比例ではなく、現役世代の負担にしわ寄せする仕組み。
後期高齢者保険料は被保険者がほとんど含まれない広域連合議会で決まる。保険料は2年に1度の全国改定。給付と対応関係を当事者にしっかり認識してもらう努力を十分払うことなく、当事者抜きで政治的配慮を優先。後期高齢者保険料は実額表示のため、常に引き上げの印象が強い。
後期高齢者保険料・現役世代支援金(保険料)・公費いずれも引き上げが容易でないとすれば、将来、給付抑制が強まる可能性が大きい。姥捨て山化。
いずれ負担の限界と給付抑制の社会問題化により、高齢者医療制度は基本的に見直さざるを得なくなるのではないか。
→ 74歳までの世帯単位であったのが、75歳になると給付に変わりはなにのに、突然に個人単位になる不自然さ
年齢で区別したため、被扶養者としての保険料負担のなかった者にも後期高齢者保険料が求めら、残った夫婦の片方の国保保険料が変わったりといった納得しにくい負担の変化が生じる。
長妻厚相時代の高齢者医療制度改革会議では、75歳以上の健保本人は健康保険に残す(被扶養者も)こととなったが、年齢で区切る限り、前述の問題は残る。
*前期高齢者医療費の保険者間負担調整にも限界が・・・・
→ 前期制度と後期制度という思想の違う制度をつなぐ不自然さ
75歳以上の高齢者はすべて保険料を負担する一方、74歳以下の被扶養者は保険料を負担しない。
前期高齢者医療費の財政調整の根拠は何か。なぜ前期高齢者のみか。退職者が多い=制度の責任、非・被用者グループの高齢化が進んでいる
→ 後期高齢者支援金・前期高齢者納付金のための拠出が保険料収入の1/2を越えてしまう被用者保険者の続出。被用者保険の調達力が限界に。経済界は医療保険に関する責任から逃げたがっている。
・後期高齢者支援金の総報酬割問題
現在の健保・国保を含めたすべての保険者の加入数割を、健保・国保の間は加入者割のままで、被用者保険内だけ総報酬割に。その結果、中小企業対策として行っている協会健保の支援金に対する国庫負担が不要になるが・・・。
→ 負担能力に応じて支援するというのであれば、国保内部も総所得割(旧ただし書き所得)にしないと片手落ち。それによる郡部の国保の負担は減り、国の財政調整交付金の一部も不要となる(その分、国保の低所得者対策に活用できる)
→ 総報酬割で浮く協会健保の国庫負担分を国保救済のために投入すべきかどうかを巡って議論。
→ いずれ行き詰まる高齢者医療制度をどのように再編するかという絵図面もなしに、一時的な財政対策として投入先を決めるべきではない。
Q.アメリカのような病気予防のビタミン剤などのように、薬局で買えるような薬も変わっていくのか。
A.医薬品を弱くしたり、許可したりして薬局で買えるようにしたのがスイッチOTC(Over The Counter)薬というが、底流としてその流れがある。ただ、薬のネット販売の解禁によって、その流れに少し弱まりがでると思う。
12時、休憩となったので、「うな正」(電話:03-3256-9288)に行き、静岡から活鰻を仕入れているという「うな丼 950円」で昼食をとる。お吸い物と漬け物もついており、久しぶりに箸で1枚まるまる持ち上がる(固くて持ち上がる)ことがない、柔らかいふわふわした鰻を食べ満足。隣にいたオトーサンは、銀河高原ビールを飲みつつ、肝焼きを食べ、うな重と肝吸いでシメるという、黄金の土曜日昼飯を堪能されていた。羨ましい限りである。
13時から再開となり、「生活保護をどう変えていく」と題して、厚生労働省大臣官房審議官(賃金、社会・援護・人道調査担当)の古都賢―氏から1時間の講義。
【講師プロフィール】古都賢―氏(厚生労働省大臣官房審議官)
1983年東京大学法学部卒、同年厚生省入省。1999年に社会・援護局施設人材課福祉人材確保対策官、2000年に名古屋大学法学部助教授、2002年に厚生労働省健康局自立病院部経営指導課施設整備管理室長などを経て、2004年に独立行政法人国立病院機構本部財務部長、2005年に老健局振興課長、2009年に年金局総務課長、2011年より厚生労働省社会援護局総務課長、2013年より現職。
主な内容は以下の通り。
*社会福祉関係で国庫負担が3/4は生活保護だけ。
<I>生活保護制度をめぐる現状
・生活保護制度の目的
最低生活の保障、自立の助長
・生活保護基準の内容
生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8つ
・生活保護受給者は215万人であり、一昨年に過去最高を更新して以降、増加傾向が続いている。
・10年度前と比較すると、特に稼働年齢層と考えられる「その他の世帯」の割合が大きく増加(20~29歳:5.3% 50歳以上:53.5%)
・生活保護費負担金(事業ベース)は3.8兆円(平成25年度当初予算)。実績額の約半分は医療扶助。
→ 健康になってもらうため、次のステップになってもらうべく指導するケースワーカーも不足している。
・医療扶助の特徴
(1)医療を必要とする60歳以上の高齢者が多い
(2)若年層にも医療を必要とする人が多い
平成22年度で若年層のうち傷病理由で保護を開始したのは38%
(3)一般的に長期治療が必要とされる精神疾患患者が多い。
レセプトでみる精神病関連疾患(平成22年度)
生活保護45%、国保等12%
・生活保護受給者に対する就労支援の状況(平成23年度実績)
対象者12.6万人、就労・増収者数4.9万人、
保護費削減 142.7億円、財政効果額 67.5億円
・不正受給の状況
毎年増加しており、そのうち5割強は稼働収入の無申告や過少申告
<II>生活保護制度の見直しと新たな生活困窮者対策の全体像
生活保護制度の見直し及び生活困窮者対策に総合的に取り組むとともに、生活保護基準の見直しを行う。
→ 第2のセーフティネットとして、就労支援
1.生活保護法の改正
(ポイント)
支援が必要な人に確実に保護を実施するという考え方は維持しつつ、以下の見直しを実施(法案提出を検討)
(1)生活保護受給者の就労・自立の促進(就労自立給付金*)の創設等)
*保護受給中の就労収入額の範囲で一定額を仮想的に積み立て、安定した職業に就いたことで保護廃止に至った場合に限り支給
(2)不正・不適正受給対策の強化(地方自治体の調査権限強化、罰則の引き上げ等)
(3)医療扶助の適正化(指定医療機関制度の見直し等)・後発医薬品の使用促進
2.生活困窮者の就労・自立支援のための新法の制定
(ポイント)
生活保護にいたる前の自立支援策の強化を図るため、以下を主な内容とする生活困窮者対策を実施(第183回通常国会に法案提出するも審議未了で廃案)
(1)利用者の状況に応じて最適な支援策を早期・包括的に提供する相談支援事業の創設
(2)離職により住まいを失った人等に対して家賃相当を有期で支給
(3)生活訓練や社会訓練等を含む就労支援策の創設
(4)生活困窮家庭の子どもへの学習支援等の実施 等
3.生活保護基準の見直し
(ポイント)
以下の考え方により生活保護基準の見直しを実施(平成25年度予算案に反映)
(1)年齢・世帯人員・地域差による影響の調整
(2)前回(平成20年)の見直し以降の物価の動向の勘案
(3)必要な激変緩和措置の実施
*生活保護制度の見直しと新たな生活困窮者対策の全体像
第183回通常国会に提出した「生活保護法の一部を改正する法律案」及び「生活困窮者自立支援法案」は、衆議院で可決したものの、参議院で審議未了の上、廃案に。
これらの法案が廃案になったことにより
(1)生活保護に至る手前の段階での早期の自立支援が行えなくなる
(2)生活保護受給者への就労・自立の促進に支障が生じる
(3)生活保護の不正・不適正受給対策の強化のための取組や医療扶助の適正化に支障が生じる。
また生活保護基準の見直しについては、8月から実施させることになるため、これらの法案については、改めて可能な限り早期の成立を期すことが必要。
<III>生活保護制度の見直し
・生活保護法の一部を改正する法律案について
必要な人には確実に保護を実施するという基本的な考え方を維持しつつ、今後とも生活保護制度が国民の信頼に応えられるよう、就労による自立の促進、不正受給対策の強化、医療扶助の適正化等を行うための所要の措置を講ずる。
1.就労による自立の促進
安定した職業に就くことにより保護からの脱却を促すための給付金を創設する。
2.健康・生活面等に着目した支援
受給者それぞれの状況に応じた自立に向けての基礎となる、自ら、健康の保持及び増進に努め、また、収入、支出その他生計の状況を適切に把握することを受給者の責務として位置づける。
3.不正・不適正受給対策の強化等
福祉事務所の調査権限を拡大する(就労活動等に関する事項を調査可能とするとともに、官公署の回答義務を創設する。)。
罰則の引上げ及び不正受給に係る返還金の上乗せをする。
不正受給に係る返還金について、本人の事前申出を前提に保護費と相殺する。
福祉事務所が必要と認めた場合には、その必要な限度で、扶養義務者に対して報告するよう求めることとする。
4.医療扶助の適正化
指定医療機関制度について、指定(取消)に係る要件を明確化するとともに、指定の更新制を導入する。
医師が後発医薬品の使用を認めている場合には、受給者に対し後発医薬品の使用を促すこととする。
国(地方厚生局)による医療機関への直接の指導を可能とする。
<IV>新たな生活困窮者対策
Q.生活保護制度の信頼にも関わる貧困ビジネス問題への対応について聞きたい。我が柏崎市、そして新潟県内では貧困ビジネスというべき、生活保護受給者を囲い込んだ施設が問題になっており、新潟県内5施設、当市においては2施設ある。社会福祉法にある無料低額宿泊所の届け出など新潟県では取り決めしたが、法的な強制力がないため、対応に限界がある。改正案にもあった就労支援の観点、もっと踏み込んだことができないものかと思うが、その辺の議論は厚労省内ではどうなっているか。
A.2年前から議員立法として議論が始まり、平成24年度半ばまでは議論があった。その後の解散総選挙後は議員立法としての議論は止まっている。届け出があれば劣悪な場所とケースワーカーが見ることで立ち入りでき、もしくは生活保護費の銀行口座を本人から取り上げているようなら規制はできる。本当に支援の意味でやっている事例もあり、法律ではっきりと線引きするには議論がいる。ただ、規制は必要であり、届出制も徹底することが重要ではないか。現在検討しているスキームとしては、民間アパートが全国的に多く空いているので、そこに移ってもらって、その時から支援NPOなどがフォローアップ。民間アパートの大家さんには行政が代理納付するようなものを考えている。
14時30分から10分間の休憩ののち、14時40分から「障害者福祉政策の動向(就労支援関係)」として厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部障害福祉課の平川課長補佐から約1時間の講義となった。
主な内容は以下の通り。
<障害福祉施策のこれまでの経緯について>
福祉3法の身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法の時代から平成15年に支援費制度の施行となり、平成18年に障害者自立支援法の施行となった。
平成25年、地域社会における共生の実現と難病者を対象として障害者総合支援法施行。
*措置制度から支援費制度へ
支援費制度の意義として、多様化・増大化する障害福祉ニーズへの対応、利用者の立場に立った制度構築。
<措置制度>
行政がサービス内容を決定
行政が事業者を特定
事業者が行政からの受託者としてサービス提供
<支援費制度>
障害者の自己決定を尊重(サービス利用意向)
事業者と利用者が対等
契約によるサービス利用
<障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言>
障害のある人への就労支援の仕組みとして、
(A)障害者就労センター
労働法の全面適用または部分適用
賃金補填等を含め最賃以上を目指す
(B)デイアクティビティセンター(作業活動支援部門)
労働法適用なし
年金等との調整で所得保障
16時30分、会場をあとにし、上越新幹線「とき337号」で長岡駅まで移動。
18時52分に長岡駅に到着し、預けておいた愛車で柏崎まで帰ろうとするも渋滞で2時間近くの無駄時間を過ごしてしまった。
21時、柏崎市内に入ったところで、スーパーで食材の買い出し。
21時40分、やっと自宅に到着し、スーパーで半額になっていた宮城県産の天然ハマチ、好物の「岩下の新生姜」 (使われている生姜は台湾の本島姜)、おにぎり(梅)、インスタントの挽き割り納豆汁、ビール500ml2本で夕食をとる。
22時30分、熱めの風呂に入ったのち、事務所で事務仕事。
食後から大量に溜まった新聞や雑誌に目を通り、気になる記事をスクラップする。
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