産業建設常任委員会視察2日目(大阪府東大阪市、奈良県生駒市)
中小企業振興条例、シティセールス
2時過ぎに就寝。
8時に起床し、シャワーを浴びたのち、ホテル2階でビュッフェ形式の朝食をとる。小粒納豆、五目炒り玉子、鯖の味噌煮、切り干し大根煮、大阪らしいたこ焼き、牛乳、スーパーホテルにしては少し寂しい品揃えの有機野菜のサラダ、マカロニサラダ、若布と油揚げの味噌汁、漬物、ご飯軽く1杯、焼き海苔、クロワッサン、パン1個、バターといった内容。いつもならご飯2杯のであるが、さすがにこの地では炭水化物はたこ焼きからとった。
9時、ホテルをでて、地下鉄堺筋線で堺筋本町に行き、中央線に乗り換えて、9時40分、近鉄・荒本駅に到着。
徒歩にて、東大阪市役所に移動する。東大阪市役所には、グレンデール市慰安婦像問題で4年前に訪れて以来である。
市役所入り口には、東大阪ブランドの地元企業の製品がディスプレイされていた。我が柏崎市では、本来、このような機能を柏崎市産業文化会館が担っていたはずである。
9時45分から東大阪市の中小企業振興についての視察となり、ラグビーの聖地として夏はラガーシャツで勤務する担当部局の方々からご説明頂いた。
1.東大阪市の概要
・人口50万4822人、面積61.81平方km
(平成26年4月1日現在)
・河内平野のほぼ中心に位置し、平成17年に中核市に移行。ラグビーのまちとしても有名であるが、古代の銅剣・銅鐸を製造していた時代から連綿と続く全国有数のものづくりのまちでもあり、技術力の高い中小企業が数多く集積している。バブル崩壊後に4割ほど企業が減ったこともあった。
・平成21年1月には人工衛星「まいど1号」の打ち上げに成功した高い中小企業のまち。
・市内には25の鉄道駅(6路線)があり、高速道路網も高度に整備されており、関西圏における一大物流拠点としての側面ももっている。
・市内全事業所数の約99%にあたる約2万6000事業所が中小企業。そのうち、製造業だけでも約6500社。全国主要都市別事業所密度においても、大阪市や大田区を抑えて圧倒的な1位となっている。
2.中小企業振興について
<条例制定までの経緯及び事業者との懇談はどのように行ったのか>
中小企業振興条例は、市長の2期目に向けたマニュフェストに基づき、平成25年4月に施行。
基本理念(第3条)「中小企業の振興は、中小企業者自らの創意工夫及び自主的な努力のもとに推進されなければならない」
→ 「中小企業者の努力」、「大企業者の役割」、「市民の理解及び協力」、「関係団体の理解及び協力」、さらに「市の責務」を明文化。
<担当職員と条例制定までの関わり方>
庁内に組織された策定委員会において合同検討会議やワーキング部会など合計14回の会議を経て素案を作成。
<商工会議所など各種団体との事前調査や連携はどうのように行ったか>
条例制定前には懇談の折に説明し、好感触であった。市内3カ所での懇談会や1カ月間のパブリックコメントを実施。しかし、パブリックコメントは1件のみであり、当時は一般市民の関心は少なかった。
<施行から今日までの成果及びその成果や不足点を踏まえたアクションについて(PDCAについて>
理念条例であるため、直ちに経済に寄与したものではない。しかし、「中小企業振興会議」(第10条)を中小企業経営者や学識経験者、市民など25名で構成し、条例の改廃や振興施策に関する事項を審議することに現実的な対応ができている。また、会議の中でもモノづくり、地域商業、農業振興などの部会を設置している。
「実施状況の公表等」(第11条)に定め、統一フォーマットにより各部署が実施施策の効果等に関する調査・分析結果を記入し、それを経済総務課が最終のとりまとめをし、ホームページ等での公表を行う。このことでPDCAサイクルを回し、さらなる振興施策につなげている
<産業振興における企業支援や連携について>
・「中小企業の振興に関する施策」(第9条)
(1)産業集積の活性化とネットワーク強化
(2)操業環境の確保と住環境との調和
(3)販路の拡大
(4)経営資源の強化
(5)人材育成と事業承継の円滑化
(6)資金調達の円滑化
(7)創造的な事業活動の促進
(8)グローバル化の支援
(9)労働環境の整備
(10)情報の発信
(11)その他必要なもの
3.モノづくり支援(住工共生への取組)
*内陸部であり、空き地がほとんど無い状態。交通インフラの整備がまだ進んでおり、その利便性により住居も増えてきており、住工共生(住工共生まちづくり条例は全国で最初)への配慮が必要になっている。
・大阪市のオフィス需要は高く、生駒山を超えると生駒市、奈良市があり、住環境が良くなっている。その良い住環境が良い奈良市から東大阪市に止まらずに大阪市内に通勤する事例もでてきている。それが東大阪市のリスクであり、都市計画の観点からも住居と産業のより良い共存を進めていく必要がある。
・住工共生のなか、実態として住居と工場が近いので、クレームなどもあり、24時間操業もできず、海外との競争に勝てない。元気な企業が、東大阪市からでていってしまうことが懸念されている。そのため、住工共生で操業に有利な環境を作り、住居側に理解してもらう必要がある。理解活動のために、補助金を出している。また同時に、工業地域に工場が移る際には、補助もだしており、住工共生と言いながらも緩やかな分離にも取り組んでいる。住宅規制エリアも一部設定。
・モノづくり企業支援に向けた4つの「方向性」
(1)高付加価値化に向けて(産官学連携、助成金)
(2)販路開拓に向けて(モノづくりワンストップ相談窓口)
→ 特筆すべきは東大阪市が直接Web上で運営する「東大阪市技術交流プラザ」
年間70万件をこえるアクセスがあり、多くの新規引き合いを生み出している
(3)操業環境の維持に向けて(住工共生の補助金、用途地区の指定)
(4)人材の育成に向けて
・今年から都市ブランドを「モノづくりのまち」としての事業展開を、近畿大学と連携して取り組んでいる。ブランディング戦略は、「モノづくりをするなら東大阪」。
Q.理念条例とは言え、実際には施策とPDCAサイクルにより、実効果がある条例と感じたところ。東大阪市の都市計画としての住工共生も素晴らしい取組であり、まちの持続性まで考慮されている。持続性ということで、質問したいが、どこの中小企業でも後継者の問題があると思う。後継者問題へのサポート体制はどうなっているのか。
A.東大阪市中小企業振興会議のモノづくり部門会議において、事業承継の促進を議論している。(1)相談窓口の強化(2)事業承継セミナー開催(3)フォローアップ調査と事例レポートの作成などに今年度から取り組んでおり、喫緊の課題と思ってる。これは製造業に限らず、農業も同様で東大阪市中小企業振興会議の農業振興検討部会で援農システムの構築をするよう提言されている。
昨日の大阪府吹田市と同様、まずは民間企業を元気にすることという意識が徹底している。工場用用地が足りないという感覚は新鮮であった。
以前も見させてもらったが、最後に議場を見学。
視察終了後、お礼を述べ、荒本駅に戻り、生駒駅に移動する。
12時、生駒駅に到着。生駒駅には「次世代の夢、リニア新駅を生駒へ」と書かれた生駒市リニア中央新幹線中間駅誘致推進協議会の看板が設置してあった。
それに比べ、柏崎市には「羽越新幹線構想の実現を!」の看板は無い・・・・。
、昼食のための自由時間となったので、駅周辺の百貨店やスーパーで納豆を買い込み、納豆メーカーの勢力も確認する。
12時35分、「杵屋 生駒近鉄百貨店」(電話:0743-72-2982)に入り、「きつねうどんセット(かやくご飯) 789円」で昼食。
かなり暑さのなか早歩きでスーパーを周って大汗をかいたので、熱くて塩気のあるつゆが染み込むように美味い。
13時10分、生駒市役所に入り、13時30分から商工観光ビジョン、シティプロモーションに関する視察となった。
もちろんのことながら、生駒市役所にも「次世代の夢、リニア新駅を生駒へ」の看板が最上階に掲げられていた。
生駒市議会企画総務委員長の成田智樹議員からご挨拶を頂いたのち、早速、商工観光ビジョン策定、シティプロモーションについてご説明頂いた。
1.商工観光ビジョン策定業務について
・生駒市の「第5次生駒市総合計画(後期基本計画)」(平成26年度~平成30年度)のまちづくりの目標の一つに位置付けられた「5 地域の資源と知恵を活かし、にぎわいと活力のあるまち」の実現に向けて、商工業及び観光の観点から、生駒市全体の産業振興の方向性を示すため、「生駒市商工観光ビジョン」を策定。
2.商工観光ビジョン策定業務における公募型プロポーザルについて
・公募型プロポーザル方式で712万8000円。
・委託内容は基礎調査業務である、(1)商工業及び観光の現状把握(2)事業者ニーズの把握(3)起業意識や支援ニーズの把握(4)商工業及び観光の振興に係る課題の整理
3.生駒市提案型商工観光活性化事業補助金について
・「生駒市商工観光活性化提案事業補助金交付要綱」と「生駒市商工業及び観光振興事業補助金交付要綱」の「商工観光振興事業補助金」と類似していることから、両交付要綱を整理し、平成29年度に新たな補助金制度を運用するために制定。
・地域商工観光業の活性化を図るため、市内の商工観光業者等が自由な発想で実施する事業を支援するための補助金制度。
・対象者は、(1)市内で事業を営む者もしくは市内に在住、在勤又は在学する者を含む5名以上を構成員とする組織又はグループ(2)前号に掲げる組織又はグループと協働する市民公益活動団体。
・対象経費は(1)まちの賑わいを創出し、生駒市の認知度向上を図るため、市内において市民との協働により開催するイベント(2)市内事業者等が自由な発想で事業計画を提案し、主体的に実施する事業もしくはイベント(3)その他、市長が適当と認めるもの。
4.商工・観光事業に関し地元大学との連携
・平成22年4月、帝塚山大学に観光経営コースが設置されたこともあり、生駒市、生駒市観光協会、生駒商工会議所、帝塚山大学の4者で協定を締結。
・平成29年度事業として、9講座、イコマブランチ、サロネーゼカフェの開催など。平成28年度は生駒市テレワーク&インキュベーターセンターのセミナー開催と国際交流プログラムを実施。
Q.商工業のなかでも厳しい状況にある小売業について聞きたい。住宅が急激に増えた生駒市の場合には、古くからの付き合いのある小売り店といったものが少ないのではないかと感じる。特に大阪のベッドタウンであり、大阪の中心部から20分で移動できるとなると、数円高くとも地元で買おう、という気持ちが、なかなか起きないのではないかと思う。そういった事に対する消費者のマインド醸成などはビジョン策定の際には議論があったか。
A.行政として、地元の商店街を使ってほしいという事業をするまでもなく、地元の商店街、お店を好きになってほしいという動きが民間から出てきている。商店街が自主的な事業(100円販売、バル、まちゼミ)に取り組んでおり、かなり危機感を持っているように感じている。
5.シティプロモーション
・人口ではなく、ファンの獲得を目指す~生駒市のシティプロモーション。
・生駒市は人口12万人、面積は53平方m。県外就業率全国2位、自然環境と交通アクセスの良さが魅力の住宅都市。電車で大阪都心部まで20分。
・主婦が幸せに暮らせる街ランキング関西2位
・8年連続全国トップレベルの学力
・シティプロモーションの必要性
順調に増加していた人口が平成30年から減少に転じた。今後10年間の後期高齢者の増が率が1.6倍(全国平均1.3倍)。
→ 住宅都市として、まちの活力を維持するためのプロモーションを実施
・シネアド放送(大阪の映画館での1分間の広告)
・リーフレット「育マチ、いこま」
・PRサイト、転入促進を目的にした子育て世代向けのPRサイトをCMSで構築
・行政施策と交通アクセスがPR素材
行政施策での差別化が難しいが、大阪市内からの転入者が全体の2割、転入時に行政サービスを調べた人28.4%、転入時に生活情報を調べた人43.3%
・行政だけ、施策頼みのプロモーションは限界がある。住む価値のあるまちを目指す。
→ 生駒市のシティプロモーションのキーワードは「まちのファンづくり」
・まちのファンづくり
生駒を知り、生駒を好きになって、まちを推奨したり、まちに参画する人を増やす「場」と「ネットワーク」づくり。
・生駒まち宣伝部(転入者・定住者から生駒ファン・アンバサダーへ)
・市フェイスブック「まんてんこま」。全国でも珍しい市と市民が共同で運用するFBページ。毎回、定員を超える応募数があり、行政ではできないお店の紹介なども市民がやっている。
→ 市民一人一人をセールスマンにするためには、その活躍する場を用意しなければならない。
・キッズいこまち探検隊。7回連続講座。
・フォトブック「いこまの愛しい時間」を「未来に残したい生駒の魅力」をテーマに作成(2000部)
・市民活動を動画作成で応援。ショートムービーでまとめ、ファン化につなげる。
・各課のプロモーション支援(例:生駒市オリジナル婚姻届はパートナーへの手紙付き。預かった手紙は3年後にお届け。門出をまちが応援し、まちを自分ゴトに。市職員採用の場もプロモーションの場)
→ 全てのプロモーションで大切にするのは「共感」
・まちのために動く人、まちを好きになる人を増やすことは、ブームや流行にのったPRよりも着実な成果がでる。
→魅力想像の担い手づくり
・新たな活動が続々と生まれるまちへ
こま市、参道ご縁市、プラレールひろば、イコマ・セレクトファッションショー、雪まつり。
【このまちで暮らす意義やまちづくりの楽しさを伝え、「住み続ける価値のあるまち」をいっしょにつくる。それは生駒のシティプロモーション】
民間企業を経験された方が担当されていることもあり、感覚が民間の広告会社のようであり、柏崎市として参考にすべき点が多くあった。
とりわけ、活躍する場を用意しなければ、市民一人一人がセールスマンにならないというr姿勢は、「市民一人一人がセールスパーソン」と言うだけの柏崎市として見習わなくてならない。
最後に議場を見せてもらったのち、御礼を述べ、生駒駅まで戻る。
生駒駅から大和西大寺駅で乗り換え、16時20分、京都駅に到着。
乗り換えの時間があるため、16時40分、「鶴屋吉信IRODORI」(電話:075-574-7627)に入り、スイーツ男子よろしく「宇治しぐれ 1080円」を食べる。
さすが1803年創業の老舗、上品なかき氷で、さっぱりとしている。
17時9分、京都駅からサンダーバード33号で福井駅に移動し、18時30分、宿泊先である福井マンテンホテル駅前にチェックイン。
18時40分、「個室物語 竹取御殿 福井駅前店」(電話:0776-28-3320)に移動し、今日の反省会を兼ねた懇親会に出席する。
かなり濃い視察内容に加え、暑い中での移動が続いたため、生ビールがぐいぐい入ってしまった。
21時40分、ホテルに戻り、無料サービスの夜鳴き蕎麦(ラーメン)を食べる。小鉢程度のサービスかと思いきや、フルサイズの醤油ラーメンであった。サービス満点のホテルである。
シャワーを浴びたのち、リフレッシュしてから、持参してきたノートパソコン(ThinkPad X61,SSD,SXGA+化,LEDバックライト化)で急ぎのメールなどを処理する。
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